国体・敷島の道
上の二首は、民族としての「日本人」の生(エロス)と死(タナトス)を見事な対比で歌つてゐる。
かたや、未来永劫の国体および民族の「清栄」「長寿」を願ふ賀の歌であり、そしてかたや、そのためには死をもいとはない痛切な恋闕の情の吐露の歌である。
「君が代」の世界を、常に安らかであつてほしいと願はずにはゐられぬ母体、あるひは連綿たる誕生を期すことの可能な「子宮」に見立てるのなら、「海行かば」の精神世界は、あたかも、その途上で斃れてゆく無数の精子を彷彿とさせる。
その覚悟に差はあつたにせよ、かうして、数知れぬ防人たちが、命を失ひ、国が時代が再生復活をとげるたびに、歴史は刻々ときざまれ、いまに至つてゐる。
その跫音に、しばし耳を澄ませる。
この冷厳な、しかし清冽なる真実を前に、人々がそれを覚悟しつつ歌ひ継ぎ、そして先人たちの霊に頭を垂れるとき、その謙虚をもつて、はじめてこれ民族の精神文化といふのである。

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